時代の変化とともに、私たちの暮らしは、はるかに忙しく、複雑になりました。仕事、家事、育児、介護、習い事、病院通いなど、スケジュールに追われる日々に心に余裕がなくなり、あっという間に月日が流れてしまいます。
現代は、情報化や競争社会によって不安やストレスが増大している時代ともいわれています。努力すれば必ず報われる、頑張ればよい結果が必ず出るという考えがすりこまれ、よい結果が出ないのは頑張りが足りないからだと焦り、早く結果を出したいともがき続けています。
不思議ですが、急げば急ぐほど、慌てれば慌てるほど、物事っていい結果にはならないものです。
私も朝時間に追われ、慌てて家を出ると、忘れ物をしてまた家に戻って結局遅くなるということがよくあります。車でスピードを出しても、つく時間はそう変わらないというのは有名な話です。事故でも起こせ大変なことです。
皆さん、アニメの一休さんをご覧になったことはあるでしょうか。必ずCMの前に「あわてない、あわてないひとやすみ、ひとやすみ」という一休さんのセリフがあります。子供のころは何のことかよくわからなかったのですが、大人になってその言葉の大切さがわかってきました。
一休さんは、一息つく暇もなく、あくせくと走り続けている私たちに、いったん立ち止まって、自分の生き方を振り返り、今ここにある幸せに気づいて生きましょうと伝えてくれているのです。
人間は愚かで弱い存在です。一人では決して生きていくことはできません。だからこそお互いに助け合い、共に支えあって生きていかなければなりません。
特に若い世代では、自分の力だけで問題を解決しようとして苦しむケースが多いようです。しかし、世の中には自分一人の力ではどうにもならないことなど山ほどあります。みんなスマホの画面を見てばかりで、これでいいのかと思ってしまいます。
今後ますます人工知能といわれるAIが進化し、私たちの相談相手となるかもしれません。わからないことは的確に教えてくれますし、すでに家電ではAIが使われており、その恩恵を受けています。しかし、あくまでAIは、コンピューターであって人間ではありません。
私たちは生きていれば、さまざまな苦しみや悩み、また悲しみと出会います。
そんな時、ただ側で共感してくれる人がいるだけで心が救われるという経験は誰しもあるのではないでしょうか?何も言わずに聞いてくれる存在、私のことを心底わかってくれる存在、それは家族であったり、友人であったり、ご往生された方だったりと、人それぞれ違うかもしれません。昔から代々、お寺や僧侶も、そういう役割を担ってきました。
現代人は知能が高く、賢いように錯覚しているのかもしれません。健康でお金さえあれば幸せだと思い込み周りの人のご恩や恵みに感謝する心を忘れていないでしょうか。身近な人の支えは当たり前すぎてなかなか気づくことが難しいものです。
私たちの人生は長いようでほんの束の間であります。これからも感謝の心を大切にし、「おかげさまです」「ありがとうございます」と手を合わせる人生を歩んでいきたいものです。
二〇二六(令和八)年三月