浄土真宗本願寺派 興徳山乗善寺

ちょっといい話

法話

2020

食品ロス

No.616

まだ食べられるのに捨てられている食べ物、いわゆる「食品ロス」の量は、日本で年間約六三二万トンにも上り、日本人一人当たり、毎日お茶碗一杯分のご飯の量を捨てていることになります。これは食品廃棄量全体の約二十三%を占め、世界中で飢餓に苦しむ人々に向けた世界の食料援助量(平成二十六年で年間約三二〇万トン)の約二倍にあたると言います。

日本の食料自給率は現在三十九%(平成二十七年度)で、大半を輸入に頼っていますが、その一方で、食べられる食料を大量に捨てているという現実があるのです。

食品ロス全体の約半分の年間約三〇二万トンが、家庭における食品ロスとなっています。家庭から出される生ごみの中には、手つかずの食品が約二割もあり、さらにそのうちの四分の一は賞味期限前にもかかわらず捨てられていると言います。

また、「消費期限」と「賞味期限」の違いを理解し、自分で食べられるものを判断することで食品ロスを大きく減らすことができます。消費期限は食べても安全な期限のことで、品質の劣化が比較的早い食品につけられます。賞味期限は美味しく食べることができる期間のことで、賞味期限が切れたからといってすぐ食べられないという訳ではありません。

アメリカでは外食した際の食べ残しを持ち帰ることを推奨しており、当たり前の光景になっています。

フランスでは二〇一六年、大型スーパーマーケットが食品を廃棄することを禁止する「食品廃棄禁止法」という法律が制定され、食品を廃棄した量に応じて罰金が徴収されると言います。店舗で消費されなかった食品はボランティア団体へ寄付することが義務となっているようです。

デンマークでは賞味期限切れの食品を中心に扱うスーパーがあり、通常の三〇〜四〇%の価格で商品を購入することができると言い、形が悪いものや賞味期限が近いものなども販売しているようです。

このように、世界中で食品ロスが問題となっており、それに対する取組も進められていることが分かります。日本でも様々な取組がなされていますが、なかなか普及していないのが現状で、個人の意識向上が求められています。

二〇〇二年にノーベル科学賞を受賞した田中耕一さんが、「私の発見は、失敗しても捨てるのはもったいない、と実験を続けたことから生まれた」と話していたことが思い起こされます。その田中さんの言葉を聞いて、二〇〇四年にノーベル平和賞を受賞したワンガリ・マータイさんが、環境を守る世界共通語として「MOTTAINAI(もったいない)」を広めることを提唱し、地球環境に負担をかけずに、持続可能な循環型社会の構築を目指す活動として「MOTTAINAIキャンペーン」が始まり、「もったいない」という言葉が、「Reduce(ゴミ削減)」、「Reuse(再利用)」、「Recycle(再資源化)」、「Respect(尊敬)」という、これら全てを包括する言葉であると定義されたのです。

「もったいない」という言葉は、阿弥陀仏のご本願をいただけたことを味わう言葉として、蓮如上人が使われたと云われています。蓮如上人が、廊下に落ちている紙切れを拾い上げ、「一枚の紙もこれみな仏法領のもの(仏より恵まれたもの)、もったいない」と押し頂かれたと云い、そのようなお姿を見られた多くの念仏者も、それ以降、「もったいない」という言葉を大切にされたと云います。「もったいない」とは、単に「無駄にしない」「節約する」という意味だけではなく、「かたじけない」と感謝する心でもあると知らされることです。

一昔前、「もったいないおばけ」というCMがありましたが、人参や大根を残してしまう子ども達をもったいないおばけが、「もったいない、もったいない」と言いながら取り囲み、最後は子ども達が「ごめんなさい」と、食べ物を粗末にせず、残さずに食べるようになるというものでした。
私たちの生活は、全てが誰かに教えていただかなければ気づけないものであります。「食品ロス」という世界的な問題を通じて「もったいない」という心に気づかせていただき、今一度、いのちの恵みを喜び、おかげさまの生活を心がけたいものです。