浄土真宗本願寺派 興徳山乗善寺

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法話

重誓偈

No.657

また今年もお盆が近づいてまいりました。毎年お盆経には偈文を二巻あげさせていただいています。

『讃仏偈』と『重誓偈』です。『讃仏偈』については昨年プリントに書かせていただきましたが、『重誓偈』についてはなかなか機会がありませんでした。お盆に二巻あげさせていただいているお経のうち、二つ目にお勤めさせていただいる偈文が『重誓偈』です。この『偈』というのが「うた」であるということはさきに説明させていただきました。つまり『重誓偈』は「重ねて誓ううた」ということになります。

親鸞聖人が八万四千ともいわれる沢山のお経の中から選び取られたのが『仏説無量寿経』(以下『大経』)・『仏説観無量寿経』・『仏説阿弥陀経』で、浄土真宗が拠り所とする浄土三部経です。 この中でも『大経』は最も大切な教えであり、『重誓偈』はこの『大経』二巻のうちの上巻、
四十八願の直後に説かれています。

さらに【「重誓偈」は『仏説無量寿経』の中にある偈頌(仏さまをたたえる歌)です。経典では法蔵菩薩が四十八願を述べた直後に示されています。四十八願の要を重ねて誓われる内容であることから「重誓偈」といい、また、それが三つの誓いとして説かれていることから「三誓偈」ともいわれています】ー(浄土真宗本願寺派 総合研究所 第3回『重誓偈』①)と述べられていることから『重誓偈』と名付けられた所以がわかります。

四十八願の要と言われるのは
 ① 世に超えすぐれた願いを建て、この上ないさとりを開くこと
 ② 苦しんでいるものをひろく救うこと
 ③ 南無阿弥陀仏の名号を十方に響きわたらせ、人々に施すこと

という三つの誓いです。三つの誓いにはそれぞれ「誓不成正覚」という言葉が出てきます。その誓いに述べたことが果たし遂げられなければ、「誓って仏にはならない」という意味です。

『大経』には阿弥陀さまがどのようにして仏さまとなられたのか、ということが説かれています。 つまり『重誓偈』には、阿弥陀仏が仏さまとなるために建てられた四十八の願いの最も大切な要が今一度示されているのです。

そのほかにも多くの苦しむ者を救いたいという法蔵菩薩の願い、そしてその願いが完成して阿弥陀仏にならずにはおられないという固い決意で締めくくられています。

私たちは『重誓偈』に重ねて誓われている、生きとし生けるものすべてを必ず救わずにはおかないという阿弥陀仏の願いに心を寄せて日々を送りたいものです。

この『重誓偈』も『讃仏偈』と同じように読経の時には節もなく、音程の変化もありませんが、注意しなければならないのは各行の最後の一文字を二拍分伸ばすということです。『讃仏偈』よりもさらに短く、ゆっくり唱えても五~十分ほどのお勤めです。朝夕にお仏壇に手を合わせるとき『正信偈』をお勤めされるご家庭も多いと聞いていますが、朝『讃仏偈』、夜『重誓偈』をお勤めされるとも聞いたことがあります。是非、報恩感謝の思いを込めてお勤めしていただければと思います。

そして私たち一人一人から、私たちそれぞれの家庭から、お念仏の声が広く大きく広がっていくことを願い、ご縁を結ばせていただいた皆様と共に人生を送っていく生活を求めて行きましょう。

それが念仏者として大切なことです。

令和四年七月