浄土真宗本願寺派 興徳山乗善寺

ちょっといい話

法話

いのちの行き先

No.644

昨年からテレビをつければ、常に新型コロナウイルス感染のニュースが流れ、一日の感染者数が毎日報道されていますが、最近では若者の感染が増えており、新型コロナウイルスの変異によって若者でも重症化するリスクも高く、これからも決して油断はできません。

約100年前に起こったスペイン風邪の時は日本でも3回にわたって流行が起こっています。

第一波ではただの風邪だと思われていたために国民の約4割の2117万人が感染し、亡くなった方は25万人にのぼりました。その一年後の第二波では、毒性はコレラやペスト以上と恐れられ、マスクを生活に取り入れることによって感染者数は減りましたが、致死率が4倍から5倍に上がりました。その原因としてはウイルスの変異によって毒性化したためではないかとみられています。

第三波では感染者数も亡くなった方も減って、致死率は第一波と同水準に低下し、終息までに三年から4年かかったそうです。

今回のコロナとスペイン風邪とは同じではないにしても、スペイン風邪の教訓を生かすとすれば日本はこれからが一番気を付けなければいけない時期ともいえるのかもしれません。

そして、現在ワクチン接種が行われ、ファイザー社のMRNAワクチンは世界初の技術が投入され、接種すればコロナに感染しても重症化することは少ないということですごく安心です。

しかし、その一方で世界初の技術だからこそ全世界の接種者は治験をされているとも言え、すごく不安でもあります。

そこで私たちが知っておかなければいけないのは、100パーセント安全なワクチンはこの世には存在しないということです。

極端な話、コロナにかかって亡くなる人もいれば、ワクチンを接種して亡くなる人もいるということです。そういわれると私たちはどうしていいのか判断ができなくなってしまいますが、結局のところ、私たちはどんなことがあっても死にたくないのです。

私たちは、生きたいのです。いつ死んでもいいなんて言ったりしますが、その一秒後に死んでしまったら困るのです。一秒後に死なないと思っているからそう言えるのです。

私たちは年齢を重ねていくと思わぬ病気になったり、体が思うようにいかずに老いを感じたり、死というものをだんだん身近に考えるようになります。しかし、それらは自分の思い通りには決していくものではありません。

浄土真宗は、そんな苦悩の多い私をこそ阿弥陀さまは救いの目当てとされ、修行に励みなさいというのではなく、「辛いね、大丈夫だよ」といつも私に寄り添い、心配してくださる阿弥陀さまに丸ごと抱き取られて、煩悩を抱えたまま仏にならせていただく教えです。

阿弥陀さまは私のいのちの行き先をもうちゃんと用意してくださっています。それは、天国でもなければ、あの世でもなく、「お浄土」なのです。

私たちはいつどうなるか分からないいのちを生きています。その私のいのちの行き先がわからずにどうして今を力強く生きることができるでしょうか。

私たちお念仏申す者はこの娑婆の縁が尽きたとき、すぐさまお浄土に生まれ、仏とならせていただくのです。

私たちの人生は人それぞれ、さまざまな悩みや苦しみがあります。しかし、そのことがあったおかげで阿弥陀さまのお心に気づかせていただくことができたのです。どんな時も、私たちは「なもあみだぶつ」と感謝のお念仏を申させていただき、一日一日をを大切に過ごしてまいりましょう。    

令和三年 七月