浄土真宗本願寺派 興徳山乗善寺

ちょっといい話

法話

尊いいのちを大切に

No.662

今年も残りわずかとなりましたが、
皆さんはこの一年どんな年だったでしょうか。

世の中さまざまなことがありましたが、特に最近思うのは尊いいのちが突然奪われるような事件や事故が多いように思えてなりません。

ロシア軍によるウクライナ侵略戦争、知床観光船カズワンの遭難事故、安倍元総理の銃撃事件、韓国での圧死事故、その他にも毎日のように悲惨な事故や犯罪によって尊いいのちを落とされる方のニュースを聞くたびに心が痛みます。そしてこれは決して他人事ではありません。私たちはいつどんな縁にあって、どうなるかもわからないのが私たちの人生です。この私たちが生きている世界を娑婆といいますが、娑婆の語源は仏教の言葉で「サハー」というインドの言葉を漢字にして「娑婆」としました。サハーを日本語に訳しますと「堪忍土」となります。

「堪忍土」とは「堪え忍ぶ世界」という意味で、私たちが生活をしているこの世の中はさまざまな苦しみを堪え忍んで生きていかなければならないというのが仏教の世界観なのです。

しかし、私たちは苦しみなどは自分の人生から排除したいというのが本音です。

健康で長生きしたい、お金があって楽な暮らしがしたい、おいしいものを食べて悠々自適な人生を送りたい、みんなからちやほやされ好かれたい、仕事が順調であってほしい、なんの心配のない生活を送りたい。 そんな妄想を抱いて、そのことにつねに執着して自らが苦しみをつくっているのが私たちです。

現代はお金があればなんでもできるかのように思ってしまいます。しかしそれは思い上がりに他なりません。 宝くじで高額当選した人の80パーセント以上が借金をして自己破産をし、友人や家族も自分の周りからいなくなってしまうという謎の現象が起きています。

私たちは、思う通りになることがあたりまえで、思い通りにいかないことには腹が立ち、辛くしんどいことと思ってしまいますが、お釈迦さまは思い通りになることがとてもありがたいことで、思い通りにいかないことがあたりまえなこととお覚りになられています。

仏教は、この世に存在する植物、動物、微生物、ウイルスなど、生きとし生けるすべてのいのちは私のいのちと同じであり、かけがえのないいのちであってそれらのすべてが深く関わりあい、つながり、支えあってはじめてわたしのいのちは存在するという縁起の教えであります。

私たちは、自分の力で生きているように思ってしまいますが、自分の力で生きている人などこの世に一人もいないのです。

お念仏の教えをいただく私たちは、阿弥陀さまの量り無い大いなるいのちに支えられ、生かされて生きています。無いものばかりを求めて不平不満を言うのではなく、毎日おかげさま、ありがとうと感謝の心を大切に、すべてのいのちに対して慈しみの心をもって、世のため人のために努めさせていただきたいものです。

コロナが流行してから3年が経ちましたが、これからはインフルエンザも流行するといわれています。

また、物価が上昇し、さまざまなものが値上がりして私たちの生活が大変になりますが、お互いお体に気を付けて、いつも優しい言葉と穏やかな顔で人と接するよう心がけ、尊いいのちを大切にこれからも過ごしてまいりましょう。そんな気持ちで新しい年を迎えたいものです。

令和四年十二月