浄土真宗本願寺派 興徳山乗善寺

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法話

つながるご縁

No.690

長い冬を越え、ようやく春を迎えることが出来ました。

春、四月といえば皆さんは何を思い出すでしょうか。仏教の行事で「花まつり」という催しがあります。この「花まつり」は、お釈迦様のご誕生をお祝いをさせていただく法要であります。

お釈迦様は現在のネパールのルンビニーという所でお生まれになられ、お生まれた直後に七歩歩いて右手で天を指し、『天上天下唯我独尊』とおっしゃられました。(このお言葉、よくこの世で自分ほど偉い者はいないという横柄な意味に取られがちな言葉でありますが、仏教での捉え方は、天上天下に唯一の、人の誰とも変わることの出来ない人間として何一つ加えることもなく、この命のままに尊い者であると捉えます。)

また、お釈迦様ご誕生の逸話に、お生まれの際に九頭の竜が現れて甘露の雨を降らせたというお話もあります。そのことから、「花まつり」には甘茶を振る舞うという習慣もあります。

お釈迦様はその後、シャカ族の王子としてお生まれになられた身分を捨て修行されました。そして今、私たちが依り処とする仏教が開かれたのです。

遇うことがとても難しいとされる仏教に今遇わさせていただいている私たちであります。そのことに感謝させていただくことが「花まつり」を催させていただく意義でありましょう。 私たちが今仏教に遇わせていただいていることは、日本に仏教を根付かせた歴史を作られた聖徳太子の存在も忘れてはいけないでしょう。

その後、長い年月をかけて親鸞聖人は浄土真宗という形で仏教を私たちに届け、阿弥陀仏のお救いの中にこそ安心して生かさせていただける人生であることを教えてくださいました。 私たちが今、仏教(浄土真宗)に遇わせていただいている理由に、ご先祖様・先人の方々のお力もあるでしょう。 約二千五百年前に開かれた仏教、七百五十年程前に説かれた浄土真宗をつなげてくださったのは、まさしくご先祖様・先人の方々のお陰であります。そして、安心の中に充実した生活を送らせてもらえるのでしょう。

『遠慶宿縁』(遠く宿縁を慶べ)、仏教のご縁に、今遇わせていただいているのは、遠い過去からの宿縁(因縁)によるものであるという意味のお言葉であります。このお言葉をいただいた時、私たちは感謝の気持ちを持たせていただけるのではないでしょうか。今ある自分は遠くからのご縁の中にこそあるのだと思う気持ち・気付きが大切なことであります。また、そう思うことから、全ての者・物・事に対して感謝の気持ちを持てるのではないでしょうか。

仏教・浄土真宗を聞(聴)かせていただいている私たち。

「ありがとう」の感謝の心を持って生活させていただきましょう。   

二〇二五(令和七)年 四月