浄土真宗本願寺派 興徳山乗善寺

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法話

龍樹菩薩

No.704

浄土真宗の正依の経典は、浄土三部経であります。この度はこの三部経を親鸞聖人までお伝えくださった方々についておはなしをさせていただきたいと思います。インドでお釈迦様が説かれた仏教は、様々な人々にその人に適したお話、対機説法として説かれたため多くのお経が伝えられています。その中から今に伝わる浄土教に関する教えに注目された方がおられました。その中のお一人が龍樹菩薩です。

龍樹菩薩はインドでのお名前をナーガールジュナと申されます。諸説伝わっていますが、紀元二世紀ごろ、南インド、ベラール地方のバラモン階級の出身で、当時すでに大乗仏教の代表的学者であったと伝わっています。

時の権力者の協力を得て、大乗仏教を広め、外道を論破する破邪顕正の人生を送り、多くの著述を残したことにより、千部の論師とも称されました。多くの著述の中で浄土教に関するものとして、『十住毘婆沙論』(浄土真宗の聖教『易行品』)・『大智度論』・『十二礼』が残されています。中でも『易行品』)に説かれる難易二道の教えは、自力・他力という考え方の根源ともなり、後の曇鸞大師の『論註』の自力・他力論や、道綽禅師の聖道・浄土二門判の拠り所にもなっています。

『易行品』には仏教の目的を、仏の国に往生することと明かされていますが、その道筋として難行・易行が説かれています。難行とは自ら努力して往生する、すなわち陸路を歩くようなもの。易行とは本願の念仏、他力の易行(阿弥陀仏の易行)によって往生する、船に乗って水上を行くようなもの、と説かれています。親鸞聖人がこれをお正信偈に「陸路のあゆみ難けれど 船路の旅の易きかな」と表しています。

親鸞聖人は龍樹菩薩を『高僧和讃』・龍樹章に
本師龍樹菩薩は 智度十住毘婆沙等 つくりておおく西をほめ すすめて念仏せしめたり
南天竺に比丘あらん 龍樹菩薩となづくべし 有無の邪見を破すべしと 世尊はかねてときたまふ
とあるように、七高僧の第一祖と敬っています。

親鸞聖人が浄土教に心をよせ、自らの人生の道しるべと定められたとき、その教義の中でも重要なものの一つに「救済観」があります。今に伝わる浄土真宗の救済観は「極悪深重の凡夫が、弥陀他力の本願によって救われる」というもので、この根本的な思いは、まさに『易行品』の教えをそのまま受け継いでいるといえるでしょう。龍樹菩薩に続く、インドの天親菩薩、中国の曇鸞大師、道綽禅師、善導大師、日本の源信僧都、源空上人の七高僧の教えは、親鸞聖人を通して私たちに往生浄土の人生を歩む大切さをお示しくださっているのです。

本堂左余間に七高僧のお掛図が掛けられています。本堂ご参拝の折には、間近にお掛図をご覧になり、古の教えにお心をお寄せください。

二〇二六(令和八)年 六月